ニッキー・ミナージュで「be動詞」
前回に引き続き、「be動詞」です。
「be動詞」は、主語によって使い分けます。
別の言い方をすれば、それぞれの主語には、決まった相棒がいる、ということです。
- 主語が"I"の場合:"am"が相棒
- 主語が"You/We/They"の場合:"are"が相棒
- 主語が"He/She"の場合:"is"が相棒
しかし!
現実には、このルールをまったく無視して使うというケースが多くあります。
今回は、見本としてラッパーのニッキー・ミナージュにご登場願います。
Nicki Minaj - Did It On'em (2010)
<その①>
All these bitches is my sons
どうですか。
曲の初っ端からこれです。
主語は複数形ですが、be動詞は"is"です。
正解は、もちろん、"are"ですよね。
「こいつらはみんな、わたしの子どもみたいなもの」
「こいつら」とは、この場合、後進の女性ラッパーたちを指しています。
「わたしが道を切り開いたお陰で、今のあんたたちがいる」
と、暗にそう言っています。
また、主語が"bitches"(ビッチたち)なのにも関わらず、"sons"(息子たち)で受けているのも気になりますよね。
これはおそらく、"son of a bitch"(くそ野郎)と引っ掛けているんでしょうね。
<その②>
Bitch, I get money, so I dos what I pleases
「カネなら稼いでるから、好きなことだけやらせてもらう」
ここでは、一般動詞です。
"dos”は、"does"のことですよね。
しかし、主語は"I"(私)ですから、いわゆる「三単元のS」をつける必要はありません。
<その③>
I live where the motherfuckin' pools and the trees is
「プールがあって、木が植えてあるところに住んでいる」
=「私は大豪邸に住んでいる」
最後の"is"はもちろん"are"ですよね。
ちなみに!
"motherfuckin'”ということばがありますよね。
「くそな」とか「いまいましい」という意味です。
しかし、ここではただ、後ろにある名詞、つまり"pools"(プール)を強調しているに過ぎません。
自宅にプールがついていることを自慢しているのに、そのプールを「いまいましい」なんて形容するのは、ちょっとおかしいですもんね。
さて、ここまで「be動詞」のイレギュラーな使い方を見てまいりました。
これは、エボニクスといって、アフリカ系アメリカ人のあいだで使われる英語の用法です。
ラップを聞くのが好きだという方は、ぜひbe動詞や一般動詞に注目しながら歌詞をチェックしてみてください。
楽しいですよ!